マンション管理コラム

Column

東京とどまるマンション制度と助成金活用術

東京都の「東京とどまるマンション制度」を解説します。制度の趣旨や最大で数百万円規模にもなる防災備蓄資器材の助成金(補助金)活用法、登録までのステップを分かりやすくまとめました。防災計画の策定や管理組合での合意形成にお悩みの際はお気軽にご相談ください。

1.首都直下地震に備える「東京とどまるマンション」制度とは?
首都直下地震などの大規模災害が発生した際、マンション住民の基本的な防災指針は「在宅避難(自宅にとどまること)」とされているのをご存じでしょうか?
東日本大震災や近年の巨大地震でも明らかなように、発災直後の避難所はすぐに定員オーバーとなります。耐震性の高い現代のマンションは、建物自体が崩壊するリスクが低いため、「自宅で安全に過ごすこと」がもっとも現実的で安全な選択肢なのです。
しかし、停電でエレベーターや給水ポンプが止まり、トイレが使えなくなってしまっては、到底「とどまる」ことはできません。そこで東京都が推進しているのが「東京とどまるマンション」登録・普及促進事業です。

2.「東京とどまるマンション」制度の趣旨と狙い
この制度の主な目的は、「災害時でも住民が安心して自宅にとどまれる防災力・受援力を備えたマンションを増やし、公的な支援(助成金等)によってその取り組みを後押しすること」にあります。
単に「登録して終わり」ではなく、登録することで東京都から防災資機材の購入補助(助成金)を受けることができ、マンション全体のハード面・ソフト面の防災力を一気に高めることができるのが最大のメリットです。登録されたマンション(分譲管理組合および賃貸オーナー)は、東京都からの助成金制度を活用できます。

3.どんな費用が補助対象になるの?
主に以下のような防災備蓄資器材の購入・設置費用が補助対象となります。
非常用トイレ・マンホールトイレ(在宅避難で最も困るのがトイレ問題です)・エレベーター用防災キャビネット・非常用電源(閉じ込め対策や非常時動線確保)・非常用発電機・ポータブル電源・ソーラーパネル
水・食料・救急用品・保管用倉庫の設置費用 等
※補助率や上限額は区分や年度(通常分など)によって異なりますが、数十万〜数百万円規模の購入費用を大幅に抑えて導入することが可能です。

4.登録から助成金申請までのロードマップ
「助成金が出るなら、今すぐ申し込みたい」と思われるかもしれませんが、実は登録や助成金申請にはいくつかのハードルがあります。まずは、防災マニュアル・防災計画の作成を行います。

5.マンション管理組合運営代行事務局でのサポート
管理組合様の課題を客観的にヒアリングし、「そのマンションに本当に必要な防災資機材の選定」「管理規約や防災マニュアルの整備」「理事会・総会での合意形成のフォロー」までをトータルで、伴走サポートすることも行っております。

6.まとめ:マンションの「在宅避難力」を高める
首都直下地震はいつ起きてもおかしくありません。住民の命と生活を守り、マンションの資産価値を高めるためにも、「東京とどまるマンション」制度と助成金の活用は非常に有効な手段です。
「自マンションが対象になるか知りたい」・「助成金を使って防災備蓄を揃えたいが、手続きが不安」・「合意形成や防災計画づくりをプロに手伝ってほしい」とお考えの理事長様・管理組合様は、お気軽にご相談ください。

マンションの長期修繕計画書とは?作成・見直しの手順と、作成後の工事実施の必要性

マンション管理にかかせない長期修繕計画書の作り方とメリットを解説します。作成・見直しの手順から総会での承認プロセスの注意点まで網羅。修繕の先送りが引き起こすリスクまでをご説明します。

1.なぜ今、長期修繕計画書が注目されているのか?
最近、新聞やニュースなどでも「マンションの長期修繕計画書」や「修繕積立金不足」に関する話題を取り上げられる機会が非常に増えました。築年数が経過したマンションが増加する中で、適切なタイミングで修繕を行い、建物の資産価値と安全性を守るロードマップとしての重要性が再認識されているからです。

2. そもそも「長期修繕計画書」とは?
国土交通省が公表している『長期修繕計画作成ガイドライン』では、マンションを長く良好な状態で維持するために「将来見込まれる修繕工事の内容や時期、資金計画をまとめた計画書」の作成を定めています。計画期間は「今後30年間」を見通して作成することが推奨されています。

3. 長期修繕計画書を作成・見直す3つのメリット
計画書を作成・更新しておくことには、次のような大きなメリットがあります。
30年間で必要となる「工事内容と概算費用」が見通せる・現在の修繕積立金で資金が足りるか(値上げが必要か)を判断できる・「いつ・どこの修繕が必要になるか」のロードマップができる
計画があるからこそ、突発的な一時金の徴収や修繕積立金の急激な値上げといった混乱を防ぐことができます。

4. 長期修繕計画書は「どこに」頼んで作るべき?
作成・見直しの方法は、大きく分けて以下の3パターンがあります。
【パターンA】
現在の管理会社に依頼する(※最も一般的) 委託契約とは別のオプション業務(別途有料)として対応してくれる場合が多いです。

【パターンB】
マンション管理士や専門の設計事務所に依頼する 第三者の中立な立場から、過剰な工事が含まれていないか厳しい目でプランを策定してもらえます。

【パターンC】
公益財団法人マンション管理センターに直接申し込む。

どれが唯一の正解というわけではありませんので、管理組合の予算や現状の課題に合わせて選択するのがおすすめです。

5. 計画書(案)が出来上がってからの流れと総会承認
外部に依頼して計画書の「原案」が完成しても、そこで終わりではありません。そこから管理組合内でのブラッシュアップが始まります。
① 資金計画と工事内容の調整
資金の検証:
現在の修繕積立金の額で将来の工事費を賄えるか?不足する場合は積立金の改定案もセットで検討します。
仕様の調整: 工事時期を前後にずらせないか、新たな設備(例:エントランスの自動ドア化、給水方式の変更など)を追加すべきか協議します。

② 住民説明会と総会決議
必要に応じて組合員に向けた説明会を開催し、意見を吸い上げたうえで総会に諮ります。総会(通常総会・臨時総会どちらでも可)で承認されて、初めて正式な「長期修繕計画」として完成します。

6.「長期修繕計画」3つの注意点
ここからは、特に注意していただきたいポイントをお伝えします。
注意点①:「計画書=工事の実施決定」ではない
「計画書通りに工事をやらないとダメです」と見積書を提示し、工事契約を迫ってくる管理会社の担当者がいるとご相談をうけることがあります。しかし、計画書の承認はあくまで「今後のロードマップの承認」であり、「工事の発注決定」ではありません。総会で採決された内容が「計画案の承認」であるならば、実際の工事を実施するかどうかは、工事直前に別途の見積もり比較や総会決議を経て決めるのが本来の姿です。管理会社の言葉に流されず、冷静に判断しましょう。

注意点②:先送りにした工事の放置は「大爆発」の元
予算不足などを理由に「今回の計画から先送りにした工事」はありませんか?計画から消えても、建物の劣化は着実に進んでいます。 放置し続けた結果、ある日突然水漏れや崩落などの致命的なトラブル(大爆発)を引き起こし、かえって膨大な修繕費用がかかってしまった現場を、私は管理会社時代に見てきました。後回しにした項目こそ、しっかり管理・把握しておく必要があります。

注意点③:計画書は「5年ごとの定期的な見直し」が必須
国のガイドラインでも「5年ごとの見直し」が推奨されています。特に昨今は、人件費や建築資材の高騰が著しく、5年前の計画時の概算費用では到底工事ができないケースが相次いでいます。「一度作ったから安心」ではなく、社会情勢に合わせて常にアップデートしていくことが重要です。

7.まとめ
長期修繕計画書を作成しただけでは、将来の積立金不足や不必要な工事発注に繋がりかねません。「修繕積立金の値上げ案について住民の合意形成が得られない」・「先送りになっている工事案件をリストアップしてほしい」など、頭を悩ませている管理組合様は、お気軽にご相談ください。

新聞一面(7月20日日経朝刊)『切り捨てられる小型物件』の記事

日経新聞で報じられた小規模マンションの管理会社による「契約解除・値上げラッシュ」の裏側をを解説します。大手管理会社が明かす採算ライン「40〜50戸」の壁と、突然の解約通知や大幅値上げが届いた際に管理組合様が取るべき3つの現実的な対処法とは?

1.日経新聞一面『切り捨てられる小型物件』の衝撃
新聞の朝刊一面に、非常にショッキングな見出しが掲載されました。
『切り捨てられる小型物件』
記事の内容を要約すると、「小規模マンションにおいて、管理会社から人手不足やコスト上昇を理由に、管理委託費の大幅な値上げ申し入れや、突然の解約通知(契約更新の拒絶)が届く事態が相次いでいる」というものです。
さらに記事中では、大手管理会社の担当者が「40戸〜50戸が採算ライン」と明かしているコメントも紹介されていました。50戸未満のマンションの区分所有者にとっては、まさに「青天の霹靂」であり、心配となる記事です。

2.なぜ管理会社は小規模物件を「選別」するのか?
長年マンション管理業界に身を置く立場としてお伝えすると、この流れは一過性のものではなく、業界構造として急速に加速しています。現在の管理会社は、どこも「退職者の増加」と「著しい採用難」に直面しています。以前のような「何でも引き受けます。」という姿勢では、到底、人のやり繰りがつかなくなっているのです。そのため、管理会社各社は現在、以下のような強力な生き残り策(業務の取捨選択)を進めています。
『働き方改革の推進(土日の理事会開催を平日へシフト要請、業務範囲の厳格化)』・『契約外業務の有償化・対応拒否(騒音トラブル対応の拒否など)』・『採算性の低い小規模・低委託費マンションの選別(解約・値上げ提示)』
限られた人材を大型物件や高収益物件に集中させるため、手間に見合わない小規模物件が「選別(切り捨て)」の対象になっているのが実態です。

3.突然「解約通知」や「大幅値上げ」が届いたら?3つの現実的対処法
もしもご所有のマンションへ、突然管理会社から「大幅な値上げ」や「解約(更新拒絶)の通知」が届いた場合、冷静に対処法を検討する必要があります。
選択肢は大きく分けて以下の3つです。
【パターン1】 現行の管理会社と契約を継続する(値上げの受け入れ)
提示された値上げや条件(勤務日数の削減など)を受け入れ、現在の管理会社に引き続き頼む方法です。最もスムーズですが、修繕積立金や管理費の値上げも検討が必要になります。

【パターン2】他の管理会社へ切り替える(リプレイス)
別の管理会社に見積もりを依頼し、変更する方法です。ただし、前述の通り「40〜50戸未満」の物件は他社にとっても採算の判断があり、「どこにも見積もりを出してもらえない(引き受けてくれない)」という事態が起こるリスクに十分注意が必要です。

【パターン3】一括発注(総合管理)から「部分発注(一部管理)」へ切り替える
管理会社にすべて丸投げ(総合管理)するのをやめ、「会計出納業務」・「事務管理業務」・「清掃業務」・「点検業務」などを、個別の専門業者へ直接分割発注する方法です。管理費を抑えられる可能性はありますが、組合役員の負担が増えるため適切なサポート設計が不可欠です。

4.まとめ:マンションの規模と理由に応じた「個別の判断」が必要です
「これが唯一の絶対的な正解!」という対処法はありません。
マンションの戸数や設備状況、現在の管理会社が解約・値上げを申し出てきた「真の理由」をしっかりと探ったうえで、管理組合様にとって最もリスクの少ない道を選択する必要があります。
「新聞で記事を見てうちのマンションも不安になった」・「管理会社から値上げや解約を匂わされている」・「部分発注や自主管理化も含めてプロのアドバイスがほしい」といったお悩みを抱えている管理組合様は、お気軽にご相談ください。

役員の「なり手不足」と不公平感を解消する3つの対策

分譲マンションの「役員なり手不足」や「理事会不参加(幽霊役員)」問題を解消する3つの方法を解説。オンライン理事会の導入や組合活動協力金の導入、役員報酬の設計、そして安易な「役員スキップ(順番延期)」が将来招くトラブルのリスクまで網羅します。

1.マンション管理組合の永遠の課題「役員なり手不足」と不公平感
分譲マンションを購入すると、法律(区分所有法)に基づき、所有者全員で構成される「(マンション)管理組合」という団体が自動的に成立します。マンションを維持管理していくために不可欠な組合ですが、現場で常に深刻な問題となるのが「役員(理事・監事)のなり手不足と不公平感」です。先日も役員輪番制の見直しのご相談がありました。
「役員を引き受けてくれる人がいない」・「選任されても理事会に全く参加しない」・「真面目に参加している一部の組合員だけに負担が偏り、不公平感が強い」
この問題は、多くのマンション管理組合が抱えている悩みではないでしょうか。そこで今回は、役員なり手問題への現実的な3つの対策と、陥りがちな注意点を解説します。

2. 役員なり手不足・不参加を解消する3つの現実的対策
役員負担の偏りを解消し、持続可能な組合運営を行うための一般的な手法は以下の3つです。
【対策1】Web(オンライン)理事会の導入と不在オーナーの解禁
「仕事や育児で集会所に行けない」という問題を解決するため、管理規約を改正してWeb会議システム(Zoom等)の利用を明文化します。また、「マンション外にお住まいのオーナー(不在所有者)」もWebで参加できる仕組みを整えることで、役員候補の母数を増やすことができます。

【対策2】役員辞退者・不参加者からの「組合活動協力金」の徴収
役員を辞退する方や、選任されても全く参加しない方に対して、ペナルティや公平性の担保として「協力金(月額数千円程度)」を徴収するルールを規約に設定します。
※最高裁判所の判例でも、額の妥当性や目的が明確であれば「協力金の徴収」は有効と認められています。

【対策3】役員報酬の導入
役員を引き受け、毎月の理事会や組合活動に時間を割いてくれている方に対し、月額数千円〜1万円程度の役員報酬(手当)を支給できるルールを整備します。

3. 反対意見が出たときにどう考えるべきか?
ルールを変更しようとすると、多くのケースで以下のようなご意見が出てきます。
「管理組合の役員就任は義務なのだから、出てきて当たり前だ」・「役員を参加させるのは管理会社の仕事だろう」・「お金で解決(協力金や報酬)するのは納得いかない」・「個々の家庭の事情に配慮すべきだ」
こうしたご意見の背景も十分に理解できます。しかし、「真面目に参加する人だけが損をする状態」を放置すると、最終的には誰も役員を引き受けなくなり、マンション管理組合の運営そのものが崩壊してしまいます。マンションの資産価値を守るためには、情に流されず「公平なルール」を明文化することが不可欠です。

4. 安易に作ってはいけない「2つのNGルール」
役員輪番制のルールを見直す際、管理組合様が良かれと思って作りがちな「危険なルール」があります。弊社ではご相談を受けた際、以下の2つのルールは原則として避けるようアドバイスしています。
【NG1】「役員順番のスキップ(後回し)」を認めるルール
例:「今は仕事が忙しいので、次の人に順番を飛ばして●年後に就任します」といった申し出を認めること。
一見親切に見えますが、数年後までの管理が複雑化し、名簿の管理ミスや「あの人は飛んだのに私はダメなのか」といった二次トラブルの原因になります。

【NG2】「やむを得ない事情があると理事会が判断した場合は辞退可」という曖昧なルール
「やむを得ない事情」の定義があいまいだと、毎年メンバーが変わる理事会ごとに判断基準がブレてしまいます。「前期の理事会は認めてくれたのに、今期の理事会は認めないのか!」と、住民同士の感情的な対立に発展するケースが非常に多いのです。(※どうしても盛り込む場合は、辞退が認められる具体的な事由を規約や細則に箇条書きで明記することを推奨します。)

5.まとめ:管理組合の現状に合わせた規約改定が必要です
役員問題の解決には、ただ規約のサンプルをコピーして貼り付けるのではなく、「管理組合様ごとの住民構成」・「これまでの役員就任の経緯」・「管理会社の関わり方」に合わせた丁寧な合意形成と規約のカスタマイズが欠かせません。
「役員が集まらず理事会が開催できない」・「辞退金(協力金)や役員報酬の制度を導入したい」・「役員輪番制のルールを整理して規約改正したい」とお悩みを抱えている管理組合様は、お気軽にご相談ください。

修繕積立金「値上げの罠」と危険な一括徴収:後悔しない改定3つのポイント

修繕積立金不足でお悩みの管理組合様へ、新築時の規約集に潜む「段階増額の罠」や「●年後▲▲万円の一括徴収計画」の実態など、令和6年改定の国交省ガイドラインを踏まえ、築浅・築古それぞれのフェーズで失敗しない均等積立方式への切り替え術を解説。

1.深刻化するマンションの「修繕積立金不足」問題
最近、新聞やニュースでも「修繕積立金が足りず大規模修繕工事ができない」・「修繕積立金が大幅値上げ」といった話題がよく取り上げられるようになり、所有者(組合員)の皆様の関心も急激に高まっています。
国土交通省が公表している『修繕積立金に関するガイドライン』も令和6年(2024年)6月にアップデートされ、適切な資金計画の重要性が改めて示されました。
修繕積立金の改定をすすめるときは、手元に「長期修繕計画書」を置いて検討していきますが、一般的なマニュアルや他社のHPではあまり触れられていない「現場の落とし穴」と「真の対策ポイント」について解説します。

2.築年数が浅い(築浅)ほど「均等積立方式」への早期切り替えを
「築浅なのに、もう値上げの検討ですか?」
築年数が浅いマンションで修繕積立金の値上げや改定を提案すると、必ずこのような反対意見が出ます。しかし、「築浅の時期こそが、均等積立方式(毎月定額で将来まで安定して積み立てる方式)へ変更する絶好のチャンス」なのです。理由はシンプルです。
「現役世代が多く、合意形成が得やすい」・「早い段階で改定するほど、一戸あたりの値上げ幅(負担感)を抑えられる」
改定を先送りにすればするほど増額幅が大きくなり、合意形成の労力と負担感は膨れ上がります。「まだ新しいから関係ない」ではなく、築浅のうちに均等積立方式へシフトしておくことが、将来のマンションを守る最大の防壁となります。

3.新築分譲時の規約集をチェック!「段階増額」と「一括徴収」の罠
新築マンションを購入した際、販売会社から修繕積立金の将来計画について詳しい説明を受けた記憶はあるでしょうか?実は、購入時に渡された分譲時の『〇〇マンション管理組合規約集』の巻末あたりに綴られていることがよくある「長期修繕計画書(資金計画表)」には、現実的には難しいのではと感じる計画が組み込まれているケースが多々あります。気になる方は販売時に配付されている管理規約集の「長期修繕計画書」開いて、以下のような記載がないかチェックしてみてください。
【危険パターン1】「●年毎増額」という小さな注記(段階増額改定方式)
購入当初の積立金を安く見せて売りやすくするため、数年ごとに積立金を値上げしていく計画です。
しかし実際には、いざ改定の時期が来ても「総会で承認が得られない」「高齢化が進んで反対多数になる」といった理由で計画通りに値上げができず、資金不足に陥る可能性が高いです。

【危険パターン2】「10年後(20年後)に一時金一括徴収」という計画
「10年目と20年目に、毎月の積立金とは別で各戸から一括▲▲万円を徴収する」といった計画が記載されているマンションが実際に存在します。数十万円〜数百万円もの一時金を所有者全員からスムーズに回収するのは、現実的にはほぼ不可能です。未払いや滞納が相次ぎ、修繕計画が破綻する可能性が高いです。

4.築年数が経過しているマンションは「将来の出口(建替え・解体)」まで視野に入れる
築年数が経過したマンションの場合、単に「次の大規模修繕工事の費用」を計算するだけでは不十分です。
最近では「マンション100年時代」と言われますが、いつかは必ず建物としての寿命(建替え、または敷地売却・解体)の時期を迎えます。
いざ建替えや取り壊しが必要になった際、その段階でいきなり所有者から数千万円単位の一時金を徴収することは不可能です。そのため、築年数が経っているマンションでは、「将来の建替え・取り壊し費用」の概算も一定ベースに組み込んだ上で修繕積立金の額を再計算していく視点が必要になります。

5.まとめ:修繕積立金の改定は「早めの対策」を
現在の長期修繕計画が「一時金一括徴収前提」や「段階増額積立方式」になっていないかを確認した上で、現実的な改定ロードマップを描く必要があります。
「分譲時の計画のまま放置されていて不安だ」・「段階増額積立方式から均等積立方式へ切り替えたいが、住民の合意が得られない」・「管理会社から提示された改定案の説明がわからない」とお悩みを抱えている管理組合様は、お気軽にお問い合わせください。

マンションの「管理費」赤字と見直しのポイント|修繕積立金からの借入リスク

「修繕積立金」ばかり注目されますが、実は「管理費」の会計が赤字に陥っているマンションが増えてきております。管理費が足りなくなる主な原因から、削減・値上げの検討手順、他会計からの借入が招く住宅金融支援機構の融資NGリスクまでを解説します。

1.注目されないけれど実は深刻!マンション「管理費」の赤字問題
新聞やインターネットで「修繕積立金が足りずに大規模修繕工事ができない」という話題がよく取り上げられます。しかし、管理組合様の決算資料(収支報告書)を確認していると、修繕積立金以上に「管理費(一般会計)の収支バランスが崩れており、あと数年で貯金(前期繰越金)が底をつく」という厳しい状態に陥っている管理組合様が少なくありません。今回は、後回しにされがちな「管理費の見直し」について解説します。

2. そもそも「管理費」は何に使われている?
国土交通省の「標準管理規約(単棟型)第27条」では、管理費(一般経費)の使い道として以下のような経常的な費用が定められています。
①管理員人件費、清掃費、ごみ処理費
②共用設備の保守点検費・電気代等の運転費(エレベーター、給水設備など)
③共用部分の損害保険料(火災保険・地震保険)
④管理会社への委託業務費
⑤専門家(マンション管理士・弁護士等)の費用・管理組合運営費
管理組合によって項目の名称や細かな区分は異なりますが、主に「日々のマンション維持・運営にかかるランニングコスト」を賄うのが管理費会計です。

3. なぜ管理費の収支バランスが崩れて(赤字になって)しまうのか?
一年間で集めた管理費収入より支出が多い「赤字状態(支出>収入)」が続いている場合、早急な見直しが必要です。赤字化する原因は1つではなく、以下のような要因が複合的に絡み合っているケースがほとんどです。
①共用部分の損害保険料の値上げ(近年、保険料率は高騰を続けています)
②電気代・燃料費の高騰、人件費上昇に伴う保守費用・清掃費の値上げ
③管理会社からの管理委託費の値上げ
④駐車場・バイク置き場の契約台数減少(使用料を管理費会計の収入に組み込んでいる場合、直撃します)
⑤設備の後付けによる保守費増(防犯カメラや宅配ロッカーなどの導入)
⑥消費税率の改定に伴う支出増
特に「損害保険料」「電気代」「管理委託費」の3つは支出に占める割合が大きいため、赤字化の大きな要因となります。

4. 管理費を見直す際の3つの重要チェックポイント
「赤字だからすぐ管理費を値上げしよう」としても、住民の合意形成は得られません。見直しにあたっては以下のステップと注意点が必要です。
【ポイント1】まずは「支出の削減(コストカット)」から検討する
値上げを提案する前に、現在の契約内容を精査して無駄を削ることが鉄則です。保険契約の見直し(補償内容や割引適用条件の再確認)・管理委託契約の精査(「契約内容に含まれているが実態として不要な業務」がないか確認)
※注意:ここで「安くするためにすぐ管理会社を変更(リプレイス)しよう」とするのは早計です。管理会社の人手不足が深刻な最近では、かえって契約条件の悪化を招くリスクがあります。

【ポイント2】他会計(修繕積立金)との「お金の貸し借り」はありませんか?
貸借対照表に「他会計預託金」「他会計預り金」といった項目がある場合は厳重注意です。「管理費が足りないから修繕積立金から一時的に借りて補填する」という運用を行っている管理組合様を散見しますが、借りたお金は当然返さなければなりません。 見直しの際は「返済分」も含めて改定案を作成する必要があります。
※注意「他会計からの借入」があると融資審査でNGに!
管理費会計が、現金不足等の理由で修繕積立金会計から借入をしていると、共用部分のリフォーム等で住宅金融支援機構の融資(リフォーム融資)を受けようとした際に審査でNGとなります。これは将来の修繕工事に甚大な影響を及ぼします。

【ポイント3】 数年後の「保険料一括払い」を計算に入れているか?
損害保険を5年などの複数年で一括契約している場合、数年後にまとめて大きな支出が発生します。「支払い時に現金が足りず、また修繕積立金から借りる」という悪循環に陥らないよう、数年後のキャッシュフローまで見据えた計画が必要です。

5.まとめ:管理費の構造はマンションごとに全く異なります
ご相談の中には、管理費と修繕積立金が「区分経理すらされていない(ごちゃ混ぜになっている)」という管理組合様も過去に数件ありました。その場合は、会計を正常化する前段階の区分経理にむけた手続きをすすめていく必要があります。
管理費会計の収支改善には、管理組合様ごとに支出項目が違うため、その精査がまずが必要となります。「決算書を見ても赤字の原因がよく分からない」・「保険料や委託費の削減ポイントを見てほしい」・「修繕積立金からの借入状態を解消したい」といったお悩みを抱えている管理組合様は、お気軽にご相談ください。

マンションの設備点検報告書、見落としていませんか?放置が招くトラブルと「予防保全」の重要性

マンションの自動ドアや給水ポンプ、エレベーターなどの保守点検報告書。「動いているから大丈夫」と放置していませんか?管理会社に勤務していたときの苦い実体験をもとに、不備指摘を放置するリスクやスピーディーな「予防保全」のメリット、管理会社との契約確認のポイントを解説。

1.マンションの「設備保守点検」、結果をそのままにしていませんか?
分譲マンションや賃貸物件には、実に多くの共用設備が備わっています。
自動ドア・給水・排水設備(給水ポンプなど)・エレベーター・立体駐車場・消防設備・受変電設備・宅配ボックス・防犯カメラ など
これらの共用設備は、分譲マンションであれば管理組合理事長様、賃貸であればオーナー様が「管理者」となります。多くのマンションでは、毎月や年に数回の定期的な保守点検作業が実施されていると思いますが、「点検が終わった後の報告書、しっかり中身を確認されてますでしょうか?」実は、この「点検結果への対応」こそが、快適なマンション生活を左右する非常に重要なポイントなのです。

2.その設備保守点検の契約者は?
まず確認しておきたいのが、管理会社との委託契約内容です。
【パターン1】管理会社との委託契約に保守点検が含まれているケース
この場合、管理会社が「元請け」として保守点検を行っておりますので、保守点検作業および点検結果の報告義務を管理会社が負っています。実際の作業会社(下請け)の報告を管理会社が受領し、点検結果を管理会社は管理組合様へ報告する責任が生じます。(※最近は報告書を郵送・送付するだけで済ませてしまう、報告といえるのか疑問を持つような対応も見受けられます)

【パターン2】管理組合様と保守会社が直接契約しているケース
この場合、保守会社は管理組合様へ直接保守点検作業および点検結果の報告義務を負います。
どちらのパターンで契約しているかは、管理会社との管理委託契約書を確認すると判断できます。管理会社との契約に一部の設備保守点検だけが含まれているケースもあります。(例:給水設備点検は管理委託契約に含まれていれ、エレベーター保守点検は管理組合様と保守会社との直接契約など)

3.報告書の「不備指摘」を放置していませんか?
提出された点検報告書に、以下のような記載がないか必ずチェックしてください。
「異音が発生しています」・「〇〇の部品が動作不良を起こしています」・「経年劣化のため交換を推奨します」など、こうした指摘があった際には要注意です。ご相談をうける際には、こんなお声を聞くことがありました。
「まだ動いているし、修理しなくても大丈夫でしょう」・「お金がかかるから、来期まで様子を見よう」・「壊れてから直せばいいんじゃない?」
お気持ちは非常に分かるのですが、「壊れてからの対応」はおすすめできません。

4.なぜ「故障してから直す」だと困るのか?
設備が完全に停止してから対応しようとすると、想像以上の労力と費用が発生します。
①対応できる業者さんがすぐに到着しない
設備保守会社さんは、日々スケジュールを組んで複数の現場を回っております。また、他の対応できる業者さんも、日々スケジュールを組んでいろいろな現場を回っております。昨今の人手不足もあり、故障連絡をしてから即座に駆けつけて修理できる業者さんはなかなか見つからないのが実態です。

②部品がすぐに届かない
「メーカーは10年部品を保持する義務がある」と言っても、在庫があることと「今日明日ですぐ現場に届くこと」は別問題です。一刻も早く直さなければならないという状況では、見積もりの比較や割引交渉はほぼ不可能であり、緊急対応費用は言い値となるため結果として割高になります。

5.「予防保全」をおすすめする理由(苦い実体験)
壊れる前、各設備の寿命や交換周期に合わせて早めにメンテナンス・交換を行うことを「予防保全」と呼びます。
予防保全をおすすめする理由として、かつてマンション管理会社に勤めていた頃、点検時の「交換推奨」を後回しにしたことで起きたトラブルを、いくつもの現場で経験してきたからです。
①給水ポンプの突然停止 ➔ マンション全戸が断水②立体駐車場の突然停止 ➔ お車の出し入れが数週間不可③排水ポンプ故障を放置しゲリラ豪雨によるエレベーターの水没 ➔ 数週間、階段利用のみ

設備は、前触れもなくある日突然ストップします。 住んでいる方の安心な暮らしを守り、余計な急ぎの費用をかけないためにも、「報告書の指摘事項は早めに是正・交換の検討を進める」のが一番の近道です。

6.まとめ:点検報告書のこまめなチェックを
毎月の点検報告書は専門用語も多く、「どこをどう見たら良いのか分からない」「提示された交換時期が妥当なのか判断が難しい」というお悩みを抱えている管理組合様は、お気軽にご相談ください。

マンション管理組合
運営事務局
運営元:合同会社green property
(グリーンプロパティマンション管理士事務所)
〒130-0026
東京都墨田区両国1-8-4両国坂本ビル703
tel.03-6824-4703 fax.03-6824-4706 mail. info@evergreen-value.com